覚悟はしていたことだった。
新しい人格が、少しずつ自分を侵食していく。
1日、1週間、1月、1年。
そうして積み重ねていく日々が、自分を壊していく。
消えたくない。消えたくない。
もう一度彩花に会いたい。
あのときにつなげなかった手をもう一度――――。
さよならなんて言わない
彩花が迎えに来てくれて、すごく嬉しかった。
いつも'雨丸'の視界から見える世界は、面白くて楽しいと思ったけどすべてが灰色だった。
彩花を視界におさめた瞬間の世界が色づいていく様は、決して誰にも分からないだろう。
それほどまでに、彩花はめぇの世界を形作っていた存在だったのだ。
「あやはな」
声にならない声で何度も唱えた呼んだ叫んだ。
「めぇ」
聞こえるはずのない声をずっと探して捜して。
ようやく出会えたのに。
鳥の羽ばたきが聞こえる。
幼いころは、棟の窓から見える鳥たちがうらやましかった。
どこまでも自由に羽ばたいていく鳥が。その翼が。
自由だったら、きっと彩花とどこまでも一緒でどこまでも2人でいられたのに。
あぁ、もう最期だね。
繋がった手から伝わる温度が愛しい。
俺のために零してくれる涙が愛しい。
別離が嫌だと泣く声が愛しい。
どこまでも一緒にいられなくてごめんね。
10年も一人ぼっちにさせてしまってごめんね。
また――――、一人ぼっちにさせてしまうけど。
でも、それでも――――。
「ごめんね、大好き」
最愛の君に、最期に最愛のことばを。
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今回はどうしても独白に。
あぁ、でもこれは寧ろ書かないほうが良かったのかも。
やっぱり、あのシーンは泣く。
片霧烈火さんの「ふたりの場所」を聞いて更に泣く。
幸せになって欲しかったな…。